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生前贈与と特別受益の持ち戻しについて

民法には特別受益という規定があり、遺産分割や遺留分算定の際に、相続や遺贈(遺言による贈与)を受ける相続人が、被相続人から生前に贈与を受けた物がある場合、これらの者の相続分をマイナスに調整しなければいけないというものです。これを「特別受益の持ち戻し計算」といいます。(民法第903条)
特別受益とは、相続人が被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与や遺贈を受けているときの利益を言います。①婚姻のための費用とは、いわゆる持参金です。②養子縁組のためとは、他の家の者になるので生前に遺産分けした物、養子先から養子縁組が整ったことにより受ける物をいいます。③生計の資本とは、事業の資金援助、他の子供より特別の学費負担、マイホーム取得の資金援助、など特別な援助・贈与を言います。
相続税法にも、持ち戻し計算の規定があり、相続または遺贈により財産を取得した者(相続人とは限りません。)が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、その財産の価額を相続税の課税価格に加算する必要があります。(相続税法第19条)

ポイント

生前贈与をする際に、これらの民法及び相続税法の規定を正しく理解しておくことで、相続発生時の相続人間でのトラブルの回避や相続税の節税が図れます。
また、遺留分を算定する際の、特別受益の持ち戻し計算で留意しておきたいのが、相続人ではない者の持ち戻しは、相続開始前1年以内に限られるということです。(ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与をしたときは、期限の制限はありません。)
贈与を受けた者が相続人の場合は、特別受益の場合と同様に期限の制限はありません。
裏を返せば、相続人ではない者に生前贈与した分に関しては、1年以上前のものであれば遺留分算定の持ち戻し計算の対象外ということになります。